西宮市の夙川にある動物病院のブログです
「無麻酔で歯石取り」は良い?悪い?   (1)
2017年03月29日 (水) | 編集 |
「無麻酔で歯石取り(歯石除去)ってしてもらえますか??」
「無麻酔の歯石取り(歯石除去)ってどうなんですか??」
以前から時々、診察の時や電話の時にされる質問です。

「無麻酔での歯石取り(歯石除去)」は、トリミングサロンや動物病院でも
行っているところがあり、飼い主さんの間で話題になることも多いみたいなので、
取り上げてみたいと思います

まず結論ですが、
「無麻酔での歯石取り(歯石除去)」は全くお勧めしていません。
(限定された状況で一部分だけ割るように取ることはあるかもしれません)

何年も前から日本小動物歯科研究会、アメリカ獣医歯科学会でも注意喚起されています。
詳細は下記のリンク先に記載されていて、「無麻酔での歯石取り(歯石除去)」に
反対している動物病院のHP上での意見もほぼ同じ内容です。
http://sa-dentalsociety.com/news/dental%20scaling.pdf

飼い主さんとお話したり、「無麻酔での歯石取り」を宣伝しているホームページを見たりすると、
色々と誤解や間違った情報などで「無麻酔の歯石取り」が良いと思われている方が多く、
それによる弊害が出てきてしまっているので、お勧めしない理由を書きますね。

無麻酔での歯石取りが広まってしまった要因には、
歯石や歯周病とその治療に対する大きな誤解や間違いと、
動物病院側の問題もあると思っています。

まず歯石と歯周病についてですが、
・見える範囲の歯石を取って見た目をキレイにすることが、歯周病の治療ではありません。
 (以前にも書きましたが、悪さをするのは歯石ではなく歯垢です)
 そしてそもそも見た目のキレイさや汚れ具合だけで歯周病の程度は判断できないのです。

歯周病(人)
 上の図を見てもらえると解るのですが、見えない部分(歯肉・歯周ポケットの中)の
 歯垢・歯石や歯の周りの組織の損傷が問題なのです。
 歯垢・歯石がどんどんと歯の根の方へと入り込んで行くとともに、歯の周りの骨が
 溶けてなくなっていっています
 つまり、見えない部分(歯周ポケットの中)の歯垢・歯石を取らずに見た目だけキレイに
 しても、歯周病は進んでいきます。

  
 そして無麻酔では、見えない部分(歯周ポケットの中)の歯垢・歯石を取ることはできないので、
 治療にはなりません(治療以前に無麻酔では口の中の検査・診断ができず、治療内容を
 決定できません)。
 実際に無麻酔の歯石取りをしている施設のホームページに掲載されている施術後の写真を
 見ても、ポケットから顔を覗かしている歯垢・歯石が手付かずで残ったままになっています。
 (人ではポケット内の歯石はすぐに取らなかったりもしますが、これは犬猫と人では
 色々なことが異なるためです)
  
 つまり無麻酔での歯石取りは見た目を多少キレイにすることはできても
 治療にはならない
ので、犬や猫からするとストレスがあるだけでメリットは
 ほとんどありません。
 (動物病院以外で治療行為をしてはいけないので、治療効果がほとんどなくて
 当たり前ですが) 
  
 そして弊害として、歯石取りをして歯の表面がある程度キレイになる、
 臭いが軽減されることで、「歯周病が改善されたので治療を受けなくてもいい」、
 「定期的に歯石取りをしていれば悪くならない」という誤解が起こり、
 歯周病が治療されずに進行していってしまいます
 その結果、歯を支える骨や歯肉が溶けて無くなり、目の下に膿がたまる、
 鼻の蓄膿症が起こる、小型犬では下顎の骨折というところまで悪化
 してしまっていることもあります。。


まだ次回もこの話題は続きますが、歯の治療について知っておいて欲しいことがあります
・無麻酔では歯周病の治療どころか検査・診断ができません。
 検査・診断ができないということは、治療が必要かどうかも解らないということです。
 (見た目が比較的キレイでも検査をすると抜歯しないといけないことはあります

・見た目では歯周病の重症度は解らないので、プロービング
 (細い棒で歯周ポケットの深さを測定)や歯のレントゲン検査などを実施して
 病状を把握します(皆さんが初めて歯医者さんに行くと必ずされる検査です)。
 プロービング
 上の写真はプロービングをしているところです。
 ここまで深く入らなくても痛いので無麻酔ではできません。
 歯科レントゲン
 上の写真は、下顎の切歯と犬歯のレントゲン写真の撮影方法です。
 仰向けにして、口の中に入れたフィルムと歯の根の角度を元に
 設定した方向からX線を照射します。
 どう考えても無麻酔では無理です。
 (普段、胸やお腹を撮影するときのフィルムやセンサーは大きすぎて
 口の中にはうまく入らないのと、画質の問題で正確な診断が難しいので、
 歯科用の小さくて高感度なフィルムやセンサーを使用します) 
 歯科レントゲン1
 上の写真は、下顎の切歯と犬歯の実際のレントゲン写真です。

・歯のレントゲン検査を実施している動物病院は増えてきていますが、
 まだまだ少数派です。
 その理由はまた後日書きますね。


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アッシュ犬猫クリニック
西宮市の夙川にある動物病院です

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