2023年05月04日 (木) | 編集 |
先月、線虫を使った手軽ながん検査「N-NOSE わんちゃん」が今月から犬でも実用化されるという話題がありました。
(https://www.sankei.com/pressrelease/prtimes/6OMKYUOTSZJQXMKUNKNA7FSJVQ/)
その検査には大手どうぶつ損保が賛同していて、損保会社から「がん早期発見&治療トータルサポート病院」に登録しませんかというメールが届いていました。
どういう検査かというと、損保会社からのメールでは「尿を提出するだけなので簡単で負担が少なく、ステージ1の早期がんでもリスクを調べることができる。検査の感度と特異度はともに80%で良好な性能である」とのことでした。
なんか良さそうだ!がんの早期発見・治療にいい検査が出てきた!と手放しで喜べるかと
いうと、実はそうとも言い切れません。。
人の方では数年前から実用化されていて、ふるさと納税の返礼品に採用している自治体もありますが、PET-CT(がんを検出するためのCT検査)施設などから検査を受けるにあたっての注意喚起がされていたりもします。
この検査には、まず前提条件があります。
・がんの種類は特定できないため、陽性の場合は様々な検査が必要になります。
(リスク判定の対象は、肝臓がん、乳腺がん、リンパ腫、甲状腺がん、
多発性骨髄腫、肉腫、骨腫瘍、尿路上皮がん、脳腫瘍の9種類です)
この検査をする前に理解しておかないといけないこと
・がんを予想できる正確性は、有病率によって変わってきます。
どういうことかというと、がんになる割合が低い年齢等では正確性が低くなり、偽陽性
(がんではないのに結果が陽性)が多くなります。
例えば、10歳の犬では6頭に1頭の割合でがんを発症しているというデータが使われる
ことが多いようですが、この場合の有病率は16.6%で、この検査の陽性的中率は44.4%
となります。
実数で言うと、60頭検査した時にがんの犬が10頭いることになりますが、検査で陽性と
判定されるのは18頭(真の陽性8+偽陽性10)で、真の陽性10頭のうち2頭は陰性の
判定になってしまいます。
この条件だと、計算上は陽性判定の半数以上の10頭にがんが存在しないことになります。
・がんのリスクありという判定が出るとがんの種類が特定できていないため、様々な検査
を実施することになりますが、その中には脳腫瘍に対するMRI検査も含まれます。
ここで問題になるのは、偽陽性の場合は様々な検査を行ってもがんが見つかりませんが、
がんがないことを証明することは難しく、解消できない不安が残こることになります。
人のPET-CT(がんを検出するためのCT検査)施設の集計では、線虫検査で
リスクありの判定された人のうちで実際にPET-CTでがんが見つかった割合は5%
に満たなかったというデータもあります(福岡和白PET画像診断クリニック
https://www.fwpet.net/news/4)。
簡単で負担の少ない検査でがんを早期発見・治療できることは理想ですが、
現時点では気軽にできる検査というよりは、特に若い犬では偽陽性が多くなりやすいことや
陽性結果の時にどこまで追求するのかを考えてから受けた方が良い検査だと思われます。
~~~~~~~~~~~~~~~
アッシュ犬猫クリニック
西宮市の夙川にある動物病院です
~~~~~~~~~~~~~~~
(https://www.sankei.com/pressrelease/prtimes/6OMKYUOTSZJQXMKUNKNA7FSJVQ/)
その検査には大手どうぶつ損保が賛同していて、損保会社から「がん早期発見&治療トータルサポート病院」に登録しませんかというメールが届いていました。
どういう検査かというと、損保会社からのメールでは「尿を提出するだけなので簡単で負担が少なく、ステージ1の早期がんでもリスクを調べることができる。検査の感度と特異度はともに80%で良好な性能である」とのことでした。
なんか良さそうだ!がんの早期発見・治療にいい検査が出てきた!と手放しで喜べるかと
いうと、実はそうとも言い切れません。。

人の方では数年前から実用化されていて、ふるさと納税の返礼品に採用している自治体もありますが、PET-CT(がんを検出するためのCT検査)施設などから検査を受けるにあたっての注意喚起がされていたりもします。
この検査には、まず前提条件があります。
・がんの種類は特定できないため、陽性の場合は様々な検査が必要になります。
(リスク判定の対象は、肝臓がん、乳腺がん、リンパ腫、甲状腺がん、
多発性骨髄腫、肉腫、骨腫瘍、尿路上皮がん、脳腫瘍の9種類です)
この検査をする前に理解しておかないといけないこと
・がんを予想できる正確性は、有病率によって変わってきます。
どういうことかというと、がんになる割合が低い年齢等では正確性が低くなり、偽陽性
(がんではないのに結果が陽性)が多くなります。
例えば、10歳の犬では6頭に1頭の割合でがんを発症しているというデータが使われる
ことが多いようですが、この場合の有病率は16.6%で、この検査の陽性的中率は44.4%
となります。
実数で言うと、60頭検査した時にがんの犬が10頭いることになりますが、検査で陽性と
判定されるのは18頭(真の陽性8+偽陽性10)で、真の陽性10頭のうち2頭は陰性の
判定になってしまいます。
この条件だと、計算上は陽性判定の半数以上の10頭にがんが存在しないことになります。
・がんのリスクありという判定が出るとがんの種類が特定できていないため、様々な検査
を実施することになりますが、その中には脳腫瘍に対するMRI検査も含まれます。
ここで問題になるのは、偽陽性の場合は様々な検査を行ってもがんが見つかりませんが、
がんがないことを証明することは難しく、解消できない不安が残こることになります。
人のPET-CT(がんを検出するためのCT検査)施設の集計では、線虫検査で
リスクありの判定された人のうちで実際にPET-CTでがんが見つかった割合は5%
に満たなかったというデータもあります(福岡和白PET画像診断クリニック
https://www.fwpet.net/news/4)。
簡単で負担の少ない検査でがんを早期発見・治療できることは理想ですが、
現時点では気軽にできる検査というよりは、特に若い犬では偽陽性が多くなりやすいことや
陽性結果の時にどこまで追求するのかを考えてから受けた方が良い検査だと思われます。
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アッシュ犬猫クリニック
西宮市の夙川にある動物病院です
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