今回は、8月22日の午後診療の開始が遅れる理由となった手術について書こうと思います
(手術中の写真は無いですが腫瘍や手術の傷が写っている写真があるので、
そういうのが苦手な人は読まれない方がいいかもしれません。)
手術の主役は14歳8ヶ月のシーズーのチータン君
最初の出会いは2011年の2月、肛門のすぐそばにできた腫瘍から出血を繰り返していました
もともと通っていた病院があったのですが、「手術はできない。塗り薬で様子をみましょう。」と言われ、
薬を塗っていたのですが状況がまったく変わらないので、近所の方の紹介で来られました。
その時の写真です。
元の病院で手術をできないと判断した理由は解りませんでしたが、無事手術は終了しました
手術から2ヶ月後の写真です。
この時と今回の手術は同じ種類の腫瘍で、「肛門周囲腺腫」という良性の腫瘍でした。
肛門周囲腺腫は、去勢手術をしていない高齢の雄犬に発生しやすい良性の腫瘍で、
多発することが多く肛門とは関係のない場所にできることもあります
良性腫瘍なので基本的には手術で摘出すれば治るものですが、病理検査で悪性の要素がなくても
まれに転移を起こすことがあります。
さて今回の肛門周囲腺腫ですが、前回と名前は同じもののできかたは全くの別物、別格でした
ただごとじゃないことは伝わるんじゃないかと思いますが、写真だけを見るとよく解らないですよね
これでも術前と術後の病理組織検査はともに良性で悪性所見はみられなかったんです。
病理検査で良性というと、ほっといても良いと思われている方が多いですが、
良性でもすごく大きくなることがあって、とんでもないことになることがあるのです
なので検査で良性だったからといって、大きくなってきているのに様子をみているとえらいことになるので、
良性でも腫瘍はやっぱり腫瘍、大きくならないか要注意です
肝心の手術ですが、腫瘍へ入っていってる血管が非常に多かったので時間がかかりましたが、
見た目でも病理検査でも完全に取りきることができました
手術直後の写真です。
そして先週、抜糸の時の写真です(手術から2週間後)。
手術する前はあまり動かず寝てばかりいたのですが、手術して1週間後ぐらいから溝を跳び越えられるようになりました
ご家族にも喜んでもらえたし、しんどい手術でしたが頑張った甲斐がありました
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アッシュ犬猫クリニック 西宮市の夙川にある動物病院です
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今回は、犬に美容整形手術
実は犬の美容整形手術は昔から日本でも一般的に行われているのですが、あまり知られていないかもしれません。
一番わかりやすいところで言うと、ドーベルマンというと耳が細く立っていて尻尾が短い外観を想像されると思います。
実際は生まれたときからそういう容姿ではなく、耳はビーグルみたいに大きく垂れていて尻尾も長いのが本来の姿です。
それを誰が決めたのか、美容整形手術で変えるのがドーベルマンとして正しい容姿としてしまったのです
人気犬種のトイ・プードルは、前足の親指を無くして尻尾を短く切られてしまいます。
勝手にこの犬種はこうあるべきだと決められて、見た目だけの問題で訳も分からず手術されたらたまったもんじゃないですよね
最近は、動物病院が手術を拒否しているのかブリーダーさんがしようとしなくなったのか、手術をされてないワンちゃんが増えてきています。
とても良い傾向ですよね
本題からそれてしまったのですが、今回は美容整形手術(正確には形成外科手術)が体のために必要だったワンちゃんのお話です
かなり珍しいのですが、生まれつき左だけ瞼の形がおかしく眼球が必要以上に露出していました。
一目見て普通じゃないのが解るレベルです
このままだと眼球にとってよくないので手術をすることになりました。
通常の手術と違って眼の周りの手術なので、見た目と眼球に対しての影響を考えて、毛の生えている方向や傷跡が解らないように注意しないといけませんし、立体的なテンションと重力をイメージしないといけません
病気を治すための手術ですが、顔なので手術跡の見た目も重要、誰が見てもうまい下手が評価できる手術ということもあり、普段の手術とはまた若干違った緊張感があり、いつも以上に肩が凝りました
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前回、予告していた開胸手術の続きです
今回は手術中の写真が出てきますので、血や内臓が写っている写真が苦手な方は絶対見ないでくださいね
去年、当院で実施した開胸手術の原因はかなり珍しいものでした
どういう病気かというと異所性甲状腺癌というものです
まず甲状腺癌は、犬では全腫瘍の中で約2%といわれている珍しい部類の腫瘍で、
首の気管の両脇にある甲状腺が腫瘍化したものです。
甲状腺癌は、稀に本来の場所ではない舌や胸の中、心臓といった場所に発生することがあって、
その場合に異所性甲状腺癌という言い方をします
さて、今回はどうやって胸の中の甲状腺癌が見つかったのかというと、
足にできた腫瘍を手術でとるための麻酔前検査で実施した胸のレントゲン写真で偶然発見されました。
(この時13歳でしたが、1週間前からやや多飲多尿かな?ぐらいで、その他には全く変わったことはありませんでした)
その時のレントゲン写真
今回、まだ腫瘍(甲状腺癌)の大きさが小さかったので、肋骨の間を開けて手術をしたのですが、
腫瘍が大きかったり周りへの癒着がある程度予想される場合は、胸骨(背骨の反対側)を切って胸を
ガバッと大きく開けて手術します。
手術中の写真です
腫瘍の一部が肺に癒着していたため、肺の部分切除も同時に実施しました。
摘出した腫瘍です
術後11日で皮膚を縫っていた糸を抜糸したときの写真です(現在は毛が元通り生えているので、傷口はわかりません)
手術1ヶ月後のレントゲン写真です
定期検診や麻酔前検査をしていると、元気にしていているワンちゃんやネコちゃんに大きな病気が
見つかることがあります。
特に今回は、足にできた良性の腫瘍をとる手術のための麻酔前検査で悪性の癌が発見され、
検査の大切さを改めて実感することとなりました
そういえば開業してから人間ドックに行ってないので、私も健康診断に行かないと。。。
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今回は無事?に前回の続きで肺腫瘍について書きたいと思います
「うちのこ、最近よく咳をするんですけど肺がんでしょうか?」と時々聞かれるのですが、
実は咳の原因で肺ガンを真っ先に疑うことはありません。
というのも犬では肺がん自体が珍しく、もし肺がんだったとしても咳が出る確率は50%ぐらいと言われているからです。
それでは、当院で手術したワンちゃんの場合はどうかというと、やはり咳はでていませんでした。
それじゃあなぜ肺がんがあるのがわかったのかというと、
心臓病(弁膜症)の定期検診のレントゲン検査で偶然発見されたので、ビックリでした
(このとき体調面で変わったことはなく、元気食欲もありました)
肺がんだけじゃなく、大体の病気はかなり進行するまで無症状です
何かしらの症状がでていて元気食欲もなくなってからだと手術ができない手遅れの状態になっていることが多いので、元気に暮らしていても(元気だからこそ)定期検査は大切なんです。
(赤ちゃんの時のしらたま)
当院で手術したワンちゃん、発見が早かったので手術から1年2ヶ月経過して現在12歳になりましたが、手術前と変わらず元気に過ごしています
(心臓の弁膜症もたいして進行していません)
ちなみに心臓の弁膜症があるから全身麻酔をかけれないと動物病院で言われることがあるみたいですが、
元気に走ることができている状態なら全身麻酔ができる可能性が高いので、
他の動物病院で診察を受けてみるのもいいかもしれません
今回のお話のワンちゃんは、飼い主さんから写真使用の許可がもらえなかったので、
残念ながらレントゲンや手術の写真をお見せできません。
文章だけではどんなことをしているのかイメージできないですよね
次回、肺葉切除ではありませんが、写真の使用許可がいただけた去年実施した開胸手術のお話をしようと思います
(大きくなったしらたま)
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アッシュ犬猫クリニック 西宮市の夙川にある動物病院です
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前(2012年2月)の続きで肺葉切除術について書こうと思います
肺葉切除術というのは、肺を部分的に摘出することなのですが、
なぜ「肺部分切除」じゃなく「肺葉切除」という言い方をするのかというと、
犬の肺は葉っぱ状に分かれているからなのです。
(SURGEON66、インターズー)
肺の腫瘍は一つの肺葉に限定されることが多いので、悪い肺葉だけを根元から切除・摘出することができます。
2つ以上の肺葉が侵されていたとしても、条件付きではありますが最大で肺の全容量の50%(複数の肺葉)を摘出することも可能です
去年(今となっては一昨年)、当院で肺葉切除の手術を実施した理由は肺がんでした(今も元気です)。
犬の肺腫瘍は、全腫瘍中約1%で悪性(がん)の割合が90%以上といわれていて、
都会や喫煙家庭犬に多い傾向があります
人間ではタバコの話題のときによく肺がんが出てくるのでよくある病気のイメージがありますが、
犬では他の場所のがんが肺に転移することは多いですが最初から肺に腫瘍ができることは珍しいのです
どれぐらい珍しいかというと、日本での動物がん治療の草分けである麻布大学腫瘍科の手術件数報告をみると、
1985年〜2010年の15年間で肺腫瘍摘出手術を実施したのは58件ということなので、
大学病院でも1年間に4件もない計算になります
民間の病院ではどうでしょう?
試しにyahooで「動物病院 手術件数」と入れて検索してみました
検索結果順で1番目、2番目の病院の年間手術件数は839件と2931件でしたが、肺腫瘍の手術は0件でした(肺に限らず胸の中に病気があるときに実施する開胸手術も0件)。
10人以上の獣医師が勤務する規模の動物病院でそんな感じですので、
肺腫瘍の手術を実際に見たことのない獣医師はかなり多いと思います
長くなってきたので、また続きは次回(おそらく今月中)。。
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